お役立ちコラム
IoTを活用したHACCP対応法
2023.08.01
【 目次 】
2021年6月から義務化になった「HACCP」について、ご存知でしょうか?
食品の衛生管理のために、状況の記録、保存、計画の見直しなどが求められています。そこで今回は、「HACCP」の言葉の意味と同時に、手順の内容や取り組みのポイントについて、徹底解説します。
HACCPとは?
HACCPとは、Hazard Analysis Critical Control Pointの頭文字をとった言葉で、「ハサップ」と読みます。食品を扱う事業者が、食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程を監視・管理することで、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法です。厚生労働省が示している以下の図が全体像になります。
HACCPは、 国連の国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格委員会から発表され、日本では、食品衛生法の改正により2021年6月から義務化が始まりました。
HACCPの手順 <7原則12手順とは>
食品規格委員会は、HACCP導入までの手順を7原則12手順としてまとめています。手順①〜⑤は原則1〜7を遂行するための準備段階としての位置付けです。
- 手順①:HACCPチームの編成
- 手順②:製品説明書の作成
- 手順③:製品の用途、対象者の確認
- 手順④:製造工程図(フローダイアグラム)の作成
- 手順⑤:製造工程図(フローダイアグラム)の現場確認
ここからは7原則になり、以下の通りです。
- 手順⑥【原則1】:危害要因の分析
- 手順⑦【原則2】:重要管理点の決定
- 手順⑧【原則3】:管理基準・許容限界の設定
- 手順⑨【原則4】:モニタリング方法の設定
- 手順⑩【原則5】:改善措置方法の設定
- 手順⑪【原則6】:検証方法の設定
- 手順⑫【原則7】:記録・保存方法の設定
HACCPは食品の安全性を守るための極めて重大な衛生管理手法です。人命をも左右し得る食品事故への理解と衛生管理の目的を含め、管理手法の教育を徹底することが必要です。
HACCP対象の事業者
HACCPの対象事業者は、冒頭にも述べた通り、食品を扱う事業者が対象になります。
では、実際にどの事業者が、どのような場面で、何を求められるのでしょうか。HACCP義務化の対象に多くみられる「飲食業」と「物流業」にスポットを当てて、具体的に見ていきましょう。
飲食業×HACCP
食品の冷蔵、冷凍庫の適正温度管理、使用期限や保存方法の見直しが挙げられます。
また、食品だけでなく、従業員や館内に対しても気を付けなければならない事があります。例えば、従業員一人一人の服装、髪の点検、怪我の有無を含めた体調管理が必要になります。館内であれば、ガスコンロや包丁など、調理器具の洗浄はできているか、トイレや調理場の掃除は行っているかなど、あらゆる場面で点検、管理が必要になります。
物流業×HACCP
一見、物流という単語だけではHACCPと無関係のように思いますが、食品を扱う物流であれば、HACCP義務化の対象になります。
例えば、あるレストランに新鮮な野菜やお肉を配送しなければならない場合、食品の鮮度は保たれているか、異物は混入していないかなど、衛生管理をする必要があります。
また、配送の工程だけでなく、食品を倉庫で保管する場合にも、適正温度が保たれているか、品質が劣化していないかなど、食品の安全を管理する必要があります。
IoTを活用したHACCP対応
それでは、HACCP義務化に対応するには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。
人間による目視での点検や、紙ベースでの記録、保管になると、かなりの工数がかかります。そこで、効率的な取り組み方法として、IoTの活用をおすすめします。IoTを活用することで、以下のようなメリットがあります
1
温度管理の自動化
人間による温度管理を想像してみてください。朝、昼、晩など、時間に合わせた定期点検が必要になり、数値を管理表に記入、保存といった複数の工程が発生し、従業員の負荷が増えてしまいます。そこで、IoTセンサーを活用することで、自動計測、自動記録が可能になります。お店の繫忙期であっても自動で温湿度管理が可能なため、チェックミスや計測忘れといった心配がなくなります。素早く、簡単に、正確な数値を記録することが出来ます。
2
素早いアラート通知
アナログ的なやり方では、異常を発見した際の情報共有が大変です。すぐに対応しなければならない場合、責任者への素早い連携が大事になります。
そこで、IoTセンサーを活用することで、センサーが異常を検知し、リアルタイムの状況を責任者に瞬時に通知することができます。点検担当者しか分からないといった状況を防ぐことができ、迅速な情報共有が可能となります。
3
スマートな情報管理
紙ベースの管理方法だと、記録が増えれば増えるほど、見返す作業に時間がかかり、紙がかさばることで、保管場所にも困ります。
そこで、IoTプラットフォームを活用することで、全ての情報を画面1つで一元管理することができます。複数のデータであっても、グラフや表で分かりやすく表示することも可能です。
IoTの可能性
IoTを活用したデータの可視化を行うことで、モニタリング、点検作業といったHACCPに必要な作業を素早く、正確に行うことができます。
IoTは、こうした社会の変化に対応することができます。