スマートビルディングとは?仕組み・メリットとIoTによるビル管理の効率化を解説
ビルの管理・運営では、設備の点検やエネルギー管理、建物内の環境維持など、さまざまな業務が発生します。一方で、管理業務の人手不足やエネルギーコストの上昇などを背景に、従来の管理方法を見直す必要性が高まっています。
こうした課題への対応策として注目されているのが、IoTなどのデジタル技術を活用する「スマートビルディング」です。
スマートビルディングの実現には、必ずしも建物全体を一度に自動化する必要はありません。まずはセンサーなどを活用して設備や環境のデータを収集・可視化し、管理業務の改善につなげることも有効です。
本記事では、スマートビルディングの仕組みやメリット、IoTを活用したビル管理の効率化に向けた進め方を解説します。
■ スマートビルディングとは?
スマートビルディングとは、IoTやクラウド、AIなどのデジタル技術を活用し、建物内の設備や環境に関する情報を収集・分析して、管理や運用の効率化を目指す建物のことです。「スマートビル」と呼ばれることもあります。
例えば、センサーで温度や電力使用量などを取得し、システム上でまとめて確認できるようにすることで、設備の状態やエネルギー使用状況を把握しやすくなります。
さらに、設備や管理システムとの連携によって、異常の通知や一部の設備制御などを実現できる場合もあります。ただし、対応できる範囲は、導入するセンサーやシステム、既存設備との連携状況によって異なります。
● 従来のビル管理との違い
| 比較項目 | 従来のビル管理 | スマートビルディングを目指す管理 |
|---|---|---|
| 設備の状態確認 | 現地確認や個別の管理画面が中心 | データを集約して確認しやすくする |
| データ管理 | 設備ごとに情報が分散しやすい | 複数の情報をまとめて管理する |
| 異常への対応 | 定期点検や担当者の確認に依存しやすい | データや通知を活用して変化を把握する |
| 運用改善 | 担当者の経験や個別の記録に依存しやすい | 蓄積したデータを改善に活用する |
スマートビルディングは、単に設備を自動で動かすことだけを指すものではありません。まずは情報を収集・可視化し、管理業務の判断に活用することも、取り組みの一つです。
■ なぜ今、スマートビルディングが注目されているのか
● 1. ビル管理業務の人手不足
ビルの管理では、設備の点検や巡回、記録の作成、問い合わせ対応など、多くの業務が発生します。人手不足が進む中で、限られた人員で管理業務を継続するためには、作業の効率化が重要です。
設備データを遠隔から確認できる仕組みを整えれば、現地に行く前に状態を把握できるなど、確認業務の進め方を見直せる可能性があります。ただし、法令や契約に基づく点検・巡回が不要になるわけではありません。
● 2. 設備データの分散
ビル内には、空調や照明、電力、給排水など、さまざまな設備があります。設備ごとに管理方法やデータの形式が異なると、建物全体の状態を把握するために手間がかかります。
設備や環境のデータを集約できれば、情報の確認や比較がしやすくなり、管理上の課題を見つける手がかりになります。
● 3. エネルギーコストや環境負荷への対応
電力などのエネルギーコストを抑えるには、使用状況を把握し、改善できる部分を見つけることが重要です。
設備の稼働状況や電力使用量を継続的に確認できれば、使用量が増える時間帯や設備ごとの傾向を把握し、運用方法の見直しに役立てられます。
● 4. テナントの快適性向上
ビルの利用者にとって、温度や湿度などの室内環境は、快適性に関わる要素です。環境データを把握できるようにすることで、問題が発生した際の原因確認や、適切な環境を維持するための検討に活用できます。
■ スマートビルディングの仕組み|IoTで設備データを収集・可視化する
スマートビルディングを実現する仕組みは、主に「データの取得」「データの送信・蓄積」「データの可視化・活用」の3つに分けられます。
● 1. センサーや設備からデータを取得する
温度、湿度、電力使用量、設備の稼働状況など、管理したい情報に応じてセンサーや計測機器を設置します。既存設備からデータを取得できる場合もありますが、設備の仕様や接続方法によって対応範囲は異なります。
まずは、どの設備や環境の情報を把握したいのかを明確にすることが大切です。
● 2. ネットワークを通じてデータを送信・蓄積する
取得したデータは、通信ネットワークを通じてシステムに送信し、蓄積します。通信方式やデータの送信方法は、センサーの種類や設置環境、既存設備の仕様などに応じて検討します。
複数の設備から情報を取得する場合は、データをどのように集約するかも重要です。
● 3. ダッシュボードなどでデータを可視化する
収集したデータをグラフや一覧で表示すると、設備の状態や数値の変化を把握しやすくなります。
例えば、時間帯ごとの電力使用量や、場所ごとの温度の違いなどを確認することで、設備の運用や管理方法を見直すための判断材料になります。
なお、データの収集・可視化と、設備の自動制御は異なる仕組みです。自動制御まで実施する場合は、対象設備との連携や制御条件の設計など、別途検討が必要になります。
■ スマートビルディングの主なメリット
● 1. 設備管理業務の効率化
設備の状態や環境データを一元的に確認できるようにすると、情報収集や記録、状況確認にかかる手間の削減が期待できます。
また、設備ごとに分散していた情報をまとめることで、担当者間の情報共有や、過去のデータとの比較もしやすくなります。
ただし、データの取得だけで点検や巡回をすべて省略できるわけではありません。現場で必要な確認作業と、データで代替・補完できる作業を整理して導入することが重要です。
● 2. エネルギー使用状況の把握と運用改善
電力使用量や設備の稼働状況を可視化すると、エネルギーの使用傾向を把握しやすくなります。
例えば、使用量が多い時間帯や、稼働状況に対して消費電力が大きい設備を確認できれば、運転時間や運用方法を見直すきっかけになります。
実際のコスト削減効果は、建物の規模や設備構成、運用方法などによって異なります。まずはデータをもとに改善の余地を確認し、施策の実施前後で効果を検証することが大切です。
● 3. 設備の異常や変化を早期に把握しやすくなる
設備の稼働状況や温度などのデータを継続的に確認することで、通常とは異なる変化に気づきやすくなります。
例えば、あらかじめ設定した条件から数値が外れた際に通知する仕組みがあれば、担当者が状況を確認するきっかけになります。
ただし、異常の検知や通知には、対象データの取得や判定条件の設定が必要です。また、データの変化だけで故障を確実に予測できるわけではないため、点検や専門担当者による判断と組み合わせて活用します。
● 4. 複数の建物・設備の情報をまとめて管理できる
複数のビルや施設を管理している場合、それぞれの設備情報を個別に確認することが、管理業務の負担につながることがあります。
複数拠点のデータを集約できる仕組みを整えれば、施設ごとの状況を比較しやすくなり、管理業務の標準化や改善対象の検討に役立ちます。
ただし、複数拠点のデータを集約できる範囲は、各施設の設備や通信環境、システムの対応状況によって異なります。
■ IoTを活用してスマートビルディングを目指す進め方
スマートビルディングを実現するために、最初から建物全体の設備を刷新する必要はありません。課題の大きい業務から着手し、段階的に取り組む方法もあります。
● STEP1. ビル管理の課題と目的を整理する
まずは、現在の管理業務で負担になっている作業や、改善したい課題を洗い出します。
例えば、次のような観点が考えられます。
- 設備の状態確認や巡回に時間がかかっている
- 電力使用量を設備別・時間帯別に把握できていない
- 複数施設の情報が分散している
- 設備データを運用改善に活用できていない
課題を整理したうえで、「確認作業にかかる時間を減らす」「電力使用状況を把握する」など、取り組みの目的を具体化します。
● STEP2. 必要なデータと取得方法を検討する
目的が決まったら、改善に必要なデータを整理します。
例えば、電力使用状況を把握したい場合は電力データ、室内環境を確認したい場合は温度や湿度のデータが候補になります。
あわせて、既存設備からデータを取得できるか、センサーの追加が必要か、通信環境に問題がないかなどを確認します。
取得できるデータと、実際に改善したい業務がつながっているかを確認することがポイントです。
● STEP3. 対象を絞ってデータの収集・可視化を始める
最初からすべての設備を対象にするのではなく、課題が明確な設備やエリアから試験的に導入する方法が考えられます。
収集したデータを確認し、必要な情報が取得できているか、担当者が判断に活用できるかを検証します。
運用しながら課題を整理し、対象設備や取得データを段階的に拡大することで、導入後のミスマッチを抑えやすくなります。
● STEP4. データをもとに運用を改善し、必要に応じて連携を拡張する
データの収集・可視化ができるようになったら、得られた情報を日々の管理業務に活用します。
例えば、電力使用量の傾向を確認して運用を見直したり、設備データの変化を確認して点検の優先順位を検討したりする方法があります。
さらに、自動通知や設備制御を検討する場合は、必要な機能や既存システムとの連携可否、誤作動時の対応などを確認します。目的に応じて段階的に機能を拡張することが大切です。
■ スマートビルディングに向けたIoTの活用イメージ
ここでは、ビル管理にIoTを活用する場合のイメージを紹介します。実際に導入できる範囲は、設備構成や取得できるデータ、システムの仕様によって異なります。
● オフィスビル:室内環境や設備の状態を把握する
オフィスビルでは、温度や湿度などの環境データ、設備の稼働状況などを収集し、管理画面で確認する活用方法が考えられます。
データを継続的に確認することで、環境の変化や設備の状態を把握し、現地確認や運用改善が必要な箇所を検討しやすくなります。
● 商業施設:エネルギー使用状況を可視化する
商業施設では、電力使用量や設備の稼働状況などを可視化し、時間帯やエリアごとの傾向を把握する活用方法が考えられます。
使用状況を確認することで、運用方法を見直すべき箇所を検討し、省エネ施策の立案や効果検証に役立てられます。
● 複数のビルを管理する事業者:施設データを集約する
複数の建物を管理する場合、各施設のデータをまとめて確認できる仕組みを整えることで、施設ごとの状況を比較しやすくなります。
データの集約にあたっては、施設ごとに異なる設備や通信方式への対応、情報の管理方法などを事前に確認する必要があります。
■ スマートビルディングの導入前に確認したいポイント
● 導入目的と効果の確認方法を決める
導入すること自体を目的にせず、どの業務を改善したいのかを明確にします。
例えば、設備の状態確認にかかる時間や、エネルギー使用状況の把握など、導入前後で比較できる指標を設定すると、取り組みの効果を評価しやすくなります。
● 既存設備との接続・連携を確認する
設備によって、取得できるデータや通信方式は異なります。既存設備をそのまま利用できるか、センサーや通信機器の追加が必要か、導入前に確認しましょう。
● 費用と運用体制を整理する
導入費用は、対象設備やセンサーの数、通信環境、システム構成、既存設備との連携範囲などによって変わります。システムの初期費用や利用料だけでなく、設置工事、保守、運用にかかる負担も含めて検討することが重要です。
また、取得したデータを誰が確認し、どのような判断や対応につなげるのか、運用体制もあらかじめ整理しておきましょう。
● セキュリティとデータ管理の方針を定める
ネットワークに接続する機器やシステムを増やす場合は、アクセス権限や通信の保護、データの管理方法なども確認する必要があります。自社のセキュリティ方針や既存システムの運用ルールに沿って、導入方法を検討しましょう。
■ IoTによる設備データの収集・可視化を支援する「IoT Station」

スマートビルディングに向けてビル管理を高度化するには、まず設備や環境に関するデータを収集し、状況を把握できる仕組みを整えることが一つの方法です。
IoTプラットフォーム「IoT Station」は、多様なセンサーや通信規格に対応し、取得したデータの一元管理・可視化を支援します。
設備や環境のデータを管理・活用する仕組みを検討する際には、対象設備や必要な情報、既存システムとの連携条件を整理し、自社の課題に合った導入範囲を検討することが大切です。
IoT Stationの機能や活用方法について詳しく知りたい方は、製品情報や資料をご確認ください。
■ まとめ|IoTによるデータ活用からビル管理の高度化を目指す
スマートビルディングとは、IoTやクラウドなどの技術を活用し、建物内の設備や環境に関する情報を収集・活用することで、管理や運用の効率化を目指す取り組みです。
実現に向けては、最初から建物全体の自動化を目指すのではなく、管理業務の課題を整理し、必要なデータの収集・可視化から段階的に取り組む方法もあります。
設備の状態やエネルギー使用状況を把握できるようにすることで、日々の管理業務の見直しや、データに基づいた運用改善につなげられます。
自社の課題や設備環境に合わせて、まずは必要なデータを把握する仕組みづくりから検討してみましょう。
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